因果、僕らの地図

その焼き鳥屋はひっそりと営業していた。
昔、その店は大きな商店の前で営業していて、気前の良い、禿げた親父が営業していた。とてもおいしそうに、肉屋の前で肉を売り、繁盛してた。誰もがその香につられてその店の前で注文してしまう。そして気前の良い親父が気前良くリップサービスと商品すらサービスする。そこにテンパが愛らしい少年が物欲しそうに見つめていた。親父は気前良く
「坊主、ほら持ってきな。」
「おいしい!」
「当然だ!なんたって内の焼き鳥はそこの美味しい肉屋から買った肉をサイコウの親父が調理してんだからな!」
そんな光景がしばしば眺めることが出来た。
大きな商店は小さく解体された。広大な土地は別の企業に買われた。焼き鳥屋は肉屋についていって、ひっそりと営業していた。
しかし気前の良い禿げた親父はいなかった。親父は体調を崩し、入院していた。年々売上も落ちて行ったが、親父はこの店だけは続けたかった。店には親父の娘が立っていた。そのうち娘は結婚し、その旦那が店に立った。それでも昔のようには繁盛していないようだった。
久々にテンパの成年がその店に買いに行った。懐かしい親父はいないが、懐かしい味が待っているから。店の旦那は言った。
「今焼けたからな、サービスしてやる。」
オヤジはサイコウの笑みを青年に向けた。まさしくあの親父の笑みだった。あの人はいないが、あの人の魂は確実にこの店に残っているようだった。成年は久々に親父にあった気分でいて、懐かしく、そして奇妙な感覚に気持ちよく浸っていた。


どんなところでどんなことが進むかは分らないけど、僕はこの店のことをきっと、この先忘れないと思う。三代に渡って良くしてもらったのだから。そして親父には安らかに眠ってもらいたい。