No.31「7」っポイ!

手荷物は
ギターと煙草さえ
あればいい
―NANA/矢沢あい

荷物はない。いや、たった148円が入った財布が1つあった。でもそれだけだ。その財布1つを持って、今の季節からは想像できない、冬の寒さの中に薄着で僕は立っていた。
自転車に跨って、行く場所は考えてない。どこがゴールかは行った先で決めればいい。どこまでもいけそうな気がしたんだよ、その時は。自転車1つでそれこそ日本海まで、ね。
国道248号線は大事な主要道路のくせに、いつも碌に整備されていない。特に歩道は目に余るものがある。その走りづらい道を自転車の上でもがきつづけていた。寒さは体力を奪い、夜の静けさは疲労を眠気に変えていく。さすがに4時間も止まらずにこぎつづければ疲れるか。まぁ、いいさ時間はまだある、まだ行けるはずだ。
旅はあっけなく終わった。突然歩道が切れて、長い高速らしい橋桁の下は早朝通勤の車が行き交い、自転車では通れなかった。そこが僕の、子供の限界だった。最初から分っていた。どこまでもいけるわけではない、限界はあると。それでも地の果てが見たかったんだ。
日が昇った
白い光が地面に降り注ぐ。
あぁ、そうさ。僕は子供さ。世の中の厳しさを知らない、頭でっかちで融通の利かないガキさ。でも良いじゃないか。だからここに居るんだからな。この日の出は誰も知らない、僕だけの記憶だ。そう、僕だけの日の出だった。僕が世界を動かした、その証だった。


こんなお馬鹿な男の夢はどうでもいいが、彼女達の「リアルな」夢は気になりませんか?

NANA (1)

NANA (1)

なかなかに秀逸で、痛烈で、さっぱりした作品。男もはまれるよ、こりゃ。