No.32「月」っポイ!

「残されるほうはどうなるんだよ?」
講義の声。けれど弱々しい声。
もちろんまったく容赦することなく、亜希子は言い放った。
「耐えるんだね」
「くそっ、あっさり言いやがって」
――――――
僕は身体に巻いたハーネスとザイールをはずし、大きく息を吸った。
そして。
振り向き、空を見上げた。

半分の月が輝いていた――――。

それがわかれば大丈夫だった。
―――半分の月がのぼる空4/橋本 紡

――あれは「好きだった」てことになるのか?
当時の僕は一言でいうと荒れていた。
その時の俺はありきたりの「反抗期」に陥っていて、いつでも抜き身の「暴力」を持ち歩き、だれかれ問わず振りかざしていた。そのくせ自分より力がある者前を避けて通った。笑いは乾いていた、嘘っぱちだった。日常はくだらなく、そのくせやけに俺にまとわりついていた。そんな時期だった、彼女と出会ったのは。
確か満月だった。家に居るのが嫌で、できる限り外に居るようにしていた。親がほぼ無理やり塾に通うように手配していたので、塾に行く振りをして外をあてどなくふらついていた。その日もそんな日だったはずだ。
薄暗い、街灯よりも満月の光のほうが明るく感じる、そんな側道に彼女は屈みこんでいた。俺は普段どうり(普通の人がするように)知らぬ顔で通りすぎるつもりだった。が、その人が美人であったことと、あまりにも日常に退屈していたのと、そして妖しかったこともあいまって声をかけてしまった。日常から連れ出してくれるような気がしたから。
「大丈夫ですか?」
「はい、何とか…」
彼女はそう言いつつも咳き込んでいるし、一向に立ち上がる気配がない。一度声をかけてしまったし、ほかっとく気にもなれなかったので何かできることはないか聞いた。彼女は水が欲しいといった。近くに自販機があるのを知っていたので、そこまで走って行き小銭を入れる。水はなかったが缶の緑茶を買い、彼女の元に戻り手渡した。彼女は礼を言い、それを受け取って口にした。
しばらくして彼女は持ち直した。改めて礼を言われた。気にすることはない、たまたま通りかかっただけだし。そこの塾からの帰りだ。「そうなんですか?私も通ってるんですよ。そこの塾。すっごい偶然ですね。」そうだ、すごい偶然だ。なんたってこの道は塾に通うには使わないから。
話を聞くと彼女と俺は時間が多少ずれてはいたが同じ日に通っていた。「へぇ、あの先生ってなんか怖くない?」なんて当り障りのない、それでいて唯一の共通点を語る。そして彼女が言った。「今日のお礼もしたいし、今度来るときちょっと遅くまで空けれる?」「別に…かまわない」こうして僕たちの付き合いは始まった。
彼女には良い彼氏が居た。写真でしか見てはないが良い男だった。あれ以来話す機会を作って付き合いは続いていた。多くは互いの高校のこと、たまに彼女ののろけ話が入った。「それでさ、彼なんていってくれたと思う?」「…さぁ?」彼女がのろける時は幸せそうだった。
冬になると彼女は咳き込む事が多くなった。たまに塾を休むことも有ったが、携帯をもっていない俺は連絡を取ることが出来ず、一人塾の前の自販機の前で、10分ほど待ってから帰った。そういうことがしばしばあり、ある時彼女は俺に手紙あて(塾の事務員に頼んで)、塾を止めた。
手紙によると彼女は病気だった。それも難病らしい。詳しい病名がかかれてはいないが、心臓の病気だった。体力的に塾を続けていくことが難しくなり、止めることになったらしい。もっと都市部の大学病院に入院することになったと手紙には書かれていた。病院名はおしえない、病室にはきっと彼が来てくれるから、別の男が入って来たらきまずいからね。彼女の綺麗に整った文字で綴られる。よくなったらまた塾に通うから、その時はこっちから声をかけるよ。そう締めくくっていた。
結局の所彼女から声が掛かることはなかった。僕は高校を卒業し、大学生になった。あの塾は潰れてしまって、あの自販機は撤去された。彼女が良くなったかどうかは知らない。心臓の難病がそう簡単に治るとは思わない。が、きっと彼と仲良くしていることだろう。そう思うと少しさびしい気がするんだ。まぁ、僕にはどうしようもないが、そう思っていたい。




なっがい前振りでしたが全部虚言だし、そんな体験したいなー。

いいよ。お涙頂戴物かもしれないけどいいよ。セカチュウと同じ設定だけど、なにか引き付けるものがある。毎回出てくる文学作品(2が銀河鉄道の夜、3がチボー家の人々、4が山月記)もいい味を出しているし。何よりヒーローはふがいない少年で、ヒロインは美人だけでどうしようもない運命を背負ってる。これでいいじゃん(物語的には不幸?)。なんたって

―それにしてもマスカラス&ドスカラス兄弟のシルエットは実に美しかった。
まるで崖に並び立つ兄弟狼みたいだ。東病棟の屋上で僕がぐっと親指を立てると、マスカラス&ドスカラス兄弟もぐっと親指を立てていた

…カッコいい、シブまっちょ良いよ。

最後に

本当に欲しいものは自分の手で強引に掴み取れよ。おまえの両手はそのためにあるんだぜ

そう本当に欲しい物は掴み取らなきゃ意味が無い。これ(虚言な妄想)書いているときPCがとんだ。やっぱ買うべきかな?